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イギリス料理はまずい? 

このイメージはどこから来たのでしょう?

(2017年4月)

日本人に「あなたがイギリスについて知っていることは?」と尋ねると、一番よく返ってくる答えは「イギリス料理はまずい!」の一言です。では本当に美味しくないのでしょうか?そもそも、なぜイギリス料理がまずいと言われるようになったのか?

この記事ではイギリス料理の歴史と共に、この否定的なイメージの原点を探っていきたいと思います。

イギリス料理の歴史

何百年も前のチューダー時代(1485-1605年)、イギリスには特定の食文化がありました。多くの食材はアジアやカリブ海諸国など世界各国から輸入され、香辛料や砂糖、ココアは食べ物や飲み物の中に入っていました。パセリやローズマリー、タイム、セージなど多くのハーブは肉の味や香りを引き立たせるために色々な方法で使われていました。この頃は非常に手の込んだレシピがいくつかありましたが、裕福な人達だけがいい食事をしていたということを頭に入れておいてください。貧しい人達は基本的にシンプルな食事のみで、この頃ほとんどのヨーロッパ諸国でもこのような食生活でした。

アップルパイは少なくとも14世紀以降からイギリスで食べられています

19世紀後半、イギリスの上流階級の人々は数日かけて仕込まれた豪華な食事を食べることがありました。おそらく、歴史映画やTVドラマなどでこのような宴会のシーンを見たことがあるかと思います。高度なスキルを持った厨房スタッフとシェフは、その腕前から高く評価され引っ張りだことなりました。厨房で働いていたのは労働者階級の人達であり、彼らは富裕層と同じような食事を摂るこはできませんでした。しかしその知識やスキルを活用し、自宅ではシンプルで美味しい料理を家族に振る舞うことができたのです。

では、イギリス料理がまずいというイメージは一体どこから来たのでしょう?

主に、第一次世界大戦(1914-1918年)と第二次世界大戦(1939-1945年)が関係しています。

第一次世界大戦は、イギリス人全員の日常生活に大きな影響を与えました。多くのものが配給され、1917年には食糧も配給されるようになります。上流階級の人々はこれまでと同じような贅沢な生活を送ることはできず、多くの労働者階級の人々は兵士や工場労働者として必要とされており、もはや厨房で働くことはできませんでした。そして厨房スタッフの人手は減り、豪華な食事を作るために必要な時間を費やすことができなくなったのです。時間を節約するため調理スタイルはとてもシンプルになりました。自炊をしていた労働者階級の人々は、基本的な食材で極めてシンプルな調理スタイルを取り入れなければなりませんでした。

こうしてこの時代にイギリスの食文化に影響が与えられましたが、数年後の第二次世界大戦ではさらに大きな変化が起こることとなります。

イギリスは1939年の第二次世界大戦から戦っていました。この間、イギリス政府によって配給制度が導入されました。食糧は決して豊富ではなく、イギリスは島国であるために国民を養うのに十分な食糧を生産することができませんでした。

多くの食糧は船でイギリスに輸入されましたが、ドイツはこの食糧輸送船を沈没させることによってイギリスの人々が餓死することを望んでいました。

ドイツの目的はイギリスの大都市の爆撃に加えて、イギリスに降伏を強いることだったのです。

1940年から大西洋の戦いが大西洋の海で始まり、この時ドイツの潜水艦は食糧を運ぶイギリスの貨物船を沈没させました。このドイツ海軍による計画はほぼ成功し、イギリス政府の一部は「我が国は降伏しなければならない」と考えていました。この時イギリスは食糧を失い、もしこれ以上この状態が続いたら戦うことができなくなっていたでしょう。

ドイツ海軍によってイギリスの多くの貨物船が沈没させられました

最終的に1942~1943年までの間に、大西洋の戦いではイギリスが少しずつ勝利を収め続けていました。

ドイツはイギリスに到着する間、すべてのイギリスの護送船(護衛されて航行する輸送船や商船の集団のこと)を止めることに失敗しましたが、配給制度は戦争中もその後も実施されていました。

ベーコン、バター、砂糖、卵、牛乳、チーズ、その他多くの食糧が配給されました。そのため、ほとんどのイギリスの家庭では簡単な材料で質素な食事をとらなければならなくなり、調理スタイルもとてもシンプルになりました。

ドイツの潜水艦(ユーボート)

1943年にヨーロッパでアメリカが戦争に加わった後(この時イギリスとアメリカは味方)、戦争の準備をするために多くのアメリカ兵がイギリスに到着しました。イギリスで生活をしている間、多くのアメリカ人はイギリスの食事が魅力的ではない、風味がない、良くないと感じたのです。なぜならアメリカでは食べ物が簡単に入手でき、美味しい食材が不足していませんでした。アメリカ人の多くは、自国で食糧不足の経験がなかったのです。

戦争が終わり、アメリカ軍の兵士たちが帰国すると共にイギリスの食べ物がまずいというイメージを広げました。これがイギリスを訪れたことのない人や、イギリスの本物の食べ物を試したことのない人が多くいる日本など、他の国々にも浸透してしまったのです。

さらに1950~1960年代の食文化が復活しつつある頃に、イギリスを訪れた観光客はイギリス料理を経験していますが、この時の料理の印象は良くありませんでした。

興味深いことに、オーストラリアとニュージーランドを訪れる多くの人は通常、食事についてはあまり文句を言うことはありません。しかしオーストラリアとニュージーランドの料理の多くはイギリスからきています(色々なポテト料理、パイ料理など)。

イギリスの食事は良くなったのか?

良くなりましたが、戦争の後も配給制度は長い間続けられました。第二次世界大戦は1945年に終戦しましたが、実際のところ配給は1954年まで続きました。戦争を経験した人々の多くは、戦争中の簡単な食事に慣れていたため、戦争後もこのような食事を摂ることを楽しんでいたのです。

しかしゆっくりと確実に食べ物が増え、家庭料理が改善されていきました。たくさんの新しい美味しいレシピが作られ、多くの人々が高品質な食材でもう一度調理することができるようになりました。配給が原因で、数年前にはできなかった食事をすることができるようになったのです。

では、現在のイギリスの食べ物はどうでしょう?

イギリス人は自国の食べ物は素晴らしいと思っているのか?

イギリスの人々は、自分の国の食べ物が世界で一番美味しい物だとは思っていません。そして、フランスやイタリア料理ほど素晴らしいものだとは感じていないのです。

しかしイギリス人は、イギリス料理が酷いという風には考えていません。多くの料理と比べると大体、イギリスの食べ物はそんなに特別ではないですが、平均的なものであると考えています

ヨーロッパでは、イギリス料理が悪いというイメージはかなり昔の考え方です。実際には2015年、トリップアドバイザーの「世界のベストレストランリスト」の1位がイギリス料理を提供するレストランでした。

他の2つのイギリス料理レストランも5位と9位に入っています(そのうちの1つはフランス料理とイギリス料理を提供しています)。

Welsh Lamb Joint (ウェルッシュラムジョイント)

イギリスには有名な食べ物がありますか?

ほとんどの日本人は、フィッシュ&チップスはイギリスで最も人気のある食べ物だと思っていますが、事実ではありません。

フィッシュ&チップスは長い間、一番人気のある食べ物ではありませんでした。イギリスで最も人気のある食べ物は、イギリスのインドカレー「チキンティッカマサラ」です。

イギリスには多くのアングロ・インド料理(イギリスインド料理)があります。これらはイギリスで作られたカレー料理であり、インドから来たものではありません。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/fd/Chicken_tikka_masala.jpg

「チキンティッカマサラ」

他にも日本人が知っている多くの料理がありますが、それらがイギリスから来ていることは知られていません。

例えば、Sandwich (サンドイッチ)、Apple Pie (アップルパイ)、Custard (カスタード)、Trifle (トライフル) はすべてイギリスの食べ物です。

以上を踏まえて、イギリス料理は世界で最高の食べ物ではないかもしれませんが、すべてがまずいという訳ではないのです。

イギリスから来た日本の食事

皆さんもご存じの「肉じゃが」がイギリスから来ていることを知っていましたか?ほとんどの日本人がこのことを知らないと思います。

1871年から1878年にかけて英国海軍に留学中、イギリスで長年住んでいた東郷平八郎は、帰国後に英国の食事「ミート&ポテトシチュー」を紹介しました。

日本では手に入らなかった食材が多かったため、シェフに作り方を教えました。食材は違いましたが、味は肉じゃがと非常に似ていたのです。

そして、1895年に東郷平八郎が京都舞鶴奨励キャンペーンに参加したと言われています。

もしイギリスに行ったら、「ミート&ポテトシチュー」を試してみてください。

カレーは元々インドが発祥であり、それをイギリス人が日本にもたらしたと言われています。

また、「カレーライス」は東郷平八郎が日本で広めたとも言われています。イギリス海軍はよくカレーライスを食べていましたが、それは簡単に作ることができて大事な栄養素を含んだ食事だったのです。カレーライスはとても実用的だったため日本海軍でも取り入れられ、その後すぐに日本で人気となった食事でした。多くのイギリス人にとって馴染みのある食事であるため、彼らは日本のカレーライスを好んで食べています。

イギリス人によって触発されたもう一つの食べ物とは、なんと‟とんかつソース”です。19世紀にはイギリスから日本にウスターソースがもたらされました。その後すぐに日本人はこれを日本人好みの味にアレンジし、やがてそれはとんかつソースとして世に知られるようになります。また、とんかつはイギリス料理に触発された可能性もあると言われています。ポークカツレツ は英語で”Pork Chops”と呼ばれていますが、時々”Pork Cutlets”と呼ばれることもあります。ポークカツレツは1899年に東京の洋食店「煉瓦亭」でメニューに載せたのが始まりです。最初はカツレツ(語源はcutlet)として知られ、やがて「豚カツ」と呼ばれるようになります。これは日本の創作料理ですが、イギリス版のCutletに触発された可能性もあるのです。

どのようなイギリス料理を試してみるべきですか?

他にもとても美味しいイギリス料理がたくさんあります。次に書いてある料理はお勧めのイギリス料理のリストです。

Sunday Roast (サンデーロースト)、Welsh Lamb Joint (ウェルッシュラムジョイント)、Scottish Smoked Salmon (スコットランドスモークサーモン)、Eton Mess (イートンメス)。

Scottish Smoked Salmon (スコットランドスモークサーモン)

ロンドンで観光する際に

イギリスを訪れる多くの日本人は、ロンドンやその周辺に滞在する傾向があります。ロンドンはヨーロッパで最も物価の高い場所の一つです。

そのため食事を安く済ませたいと思う多くの観光客は、安いレストランに行くでしょう。これらの場所は大体、質の良い本物のイギリス料理を作ることはなく、クオリティが非常に低いものが多いです。

ロンドンで美味しいイギリス料理を食べようと思うと、かなり高価かもしれません。

もし節約したい場合は、ロンドンにある他の多国籍料理を試してみてください。例えば、モロッコ、ギリシャ、メキシコなど多くの料理があります。

イギリスを訪れた際は、ロンドン以外の地域、特に田舎の方は遥かに安く、より良い食材を低価格で提供しています。本物のイギリス料理を体験するために、是非このような場所で食べてみてください。

しかし多くの日本人にとって、ロンドン以外で食事をすることは難しいです。これは数日間イギリスを訪れた際に、その大半をロンドンで過ごす人が多いからです。もしロンドンにいる間に本当のイギリス料理を食べたい時は、こちらの記事をご覧ください。お勧めのイギリス料理と、それが食べられるお勧めのレストランを紹介しています。

そしてイギリスに行った際には、是非シーフードや伝統料理をお楽しみください!

 

Image Credit: Chicken tikka masala by Michael Hays (Flickr) [CC BY 2.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons

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