今日は「Can I get…?」という表現について少し話したいと思います。
この表現はレストランやカフェなどで何かを注文する時に使われるフレーズで、アメリカ英語を話す人がよく使う表現です。
<例>
Can I get a beer?
しかし、アメリカ以外の英語圏の国でこのフレーズを使うことはあまりお勧めしません。
ではどうしてでしょう?
ネイティブの中にはこの表現が失礼で、あまり好ましくないと感じている人がいます。実際には、「Can I get…?」=「(自分で)取りに行ってもいいですか?」という意味合いになるため、意味を誤って解釈してしまうネイティブもいるのです。
<例>
Can I get some ice?
上の例文をアメリカで使うと、スタッフはこのお客さんが「自分の席まで氷を持ってきてほしい」と言っていると解釈します。
一方イギリスでは、お客さんが自分で氷を取りに行ってもいいのかをスタッフに聞いていると解釈されてしまうかもしれません。
なぜこの表現が失礼だと思われるのかと言うと、‟礼儀”に関係しているからです。
アメリカでは、レストランなどのウェイターは給料が安いため、自分の給料がふさわしい額になるよう、お客さんから貰うチップで稼いでいます。つまりチップのために気を配る接客を心がけ、お客さんはウェイターに直接話しかけることができます。また、客の態度が少々悪くてもスタッフは見逃して高いチップに期待しているのです。
イギリスではスタッフには最低賃金が支払われ、その仕事に見合った額の給料が支払われます。イギリスにも‟チップ文化”はありますが、絶対ではありません。スタッフもすべてのお客さんに対してチップを期待していません。これはスタッフが‟お客様は神様”のように接客する必要がないことを意味します。ウェイターは丁寧な対応を期待されますが、同じようにお客側にも丁寧な態度が必要とされます。もし客の態度が悪ければスタッフはそれを嫌がり、直接注意することもあるでしょう。
イギリスでは、アメリカ人観光客がアメリカと同じような言い方でウェイターに話している人を見かけます。そしてスタッフがその話し方を迷惑だと感じ、丁寧な言葉を使うように頼んだとしたら彼らはびっくりするでしょう。
最近、英語を勉強する人の中にはたくさんのアメリカ英語の表現を学んでいる人がいます。そしてアメリカ以外の英語圏の国に行く時にも、それらの表現を使っていますが、英語圏の国それぞれの言葉の礼儀の違いを知らない人が多いのです。
では英語圏の国、どこでも使える表現を見ていきましょう。
最も一般的で丁寧な表現は「Can I have…?」です。さらに丁寧に言う場合には「Could I have….?」と聞くのが良いでしょう。
<例文>
Can I have a coffee?
Could I have the smoked salmon?
以下のように「please」を付け加えることで、さらに丁寧な表現になります。「please」はいつでも使って損はないので、常にセットで覚えておくといいと思います。
<例文>
Could I have a medium-rare steak, please?
とてもかしこまった場にいる場合は「May I have…? 」と言うこともできます。この表現は最上級の丁寧な言い方になります。
<例文>
May I have a glass of red wine, please?
他にも「I’d like」や「I’ll have」のようにカジュアルな表現もありますが、その場合でも「please」は必ず付ける必要があります。もし使わないと、店員からは行儀が悪いと思われてしまいます。
<例文>
I’ll have a pint of lager, please.
I’d like a glass of water, please.
今日紹介したフレーズを使うことで、スタッフはお客さんに対して尊敬の意を示し、とても有り難い気持ちになります。
アメリカにいる場合には「Can I get…? 」と使っても構いませんが、他の英語圏の国、特にイギリスではこのフレーズを使うのはやめておいた方がいいでしょう。